工場eがあり、本社のサブシステムとしては研究開発部門a、物流部門b、営業部門C、人事・財務など管理部門dがあるとしよう。
日本型の製造業の新しいシステム構築では、サブシステムとしての工場eにまず新方式(かんばんなど)を導入することにより工場はイの状態に変化する。
これが関連する研究開発部門aと物流部門bとの「つなぎ」の部分で混乱(ゆらぎ)を生じさせ、aもbも変化せざるをえなくなる。
このサブシステムeとabの変化により、全体システムAが変化し、それがまた営業部門Cと管理部門dに波及して変化させ、「気がついてみたら」企業全体の生産システムがA←B←Cと、はるかによりよく大きく変化していた。
これが日本型の変化のイメージである。
ただし、これは後述するように、なし崩しに変化が進むので左右する。
日本型システムの再構築の特色は、いつまでに、どのような形にまとまるかはだれにもわからないところにある。
「まずはやってみて」いくつものサブシステムを実験的にトライで変えてしまうわけであるから、相互にどういう影響がプロセスで生じていくか、予想は不可能である(最近の複雑系のマネジメントがようやくこの自己組織化のプロセスを明らかにし始めたところである。
これに対して欧米型の新しいシステム構築では、例えば全体システムをAからBへ再構築する戦略を立て、そのために研究開発部門a、物流部門b、営業部門C、管理部門dを再編する。
それから工場eにリーン生産方式を導入してBに機能強化(インプルーブメント)するか、れば、思わぬ大失敗を招きかねない。
Tの場合、生産システムを押し込み方式から後工程引き取りへ変えてしまったときに、その工場とつながる部門は当然混乱する。
その混乱が次のサブシステムの改善活動を引き起こすといった形で変革が進んだ。
一九七三年、T生産方式がまとまりを見せてテキストがつくられたとき、O氏は「気がついたら」このようなシステムができていたと語ったと言われる。
日本におけるシステム改善では部署内ではもちろん、部門間での「助け合い」が不可欠である。
これらの協力関係を「つなぎの技術」と言う。
O氏は「仲間集団」を基本とする絶妙な連係プレーを、陸上リレーのバトンタッチにたとえて力説した。
日本型の陸上リレーで競走すればチームの勝敗はバトンリレー技術がさらにビジネスモデルをCに企業変化(イノベーション)させるためにbとdはアウトソーシングして、新たにネット部門fを買収(M&A)するといった戦略主導型の展開をすることが典型的である。
欧米型では戦略目標に掲げた「あるべき形」を目指して、トップダウンでシステム再構築が展開されるので、どれだけ狙った形になったかの満足度には当然差が出るが、ほぼ狙ったシステムにすばやく移行する。
しかし計画が硬直的で環境の激変に柔軟に対応できない傾向があり、組織が自発的に動きにくい点では劣っており、弱点となっている。
欧米型に対して、日本型の問題は「どのようなシステムがいつ頃にはできるか」がわからないことである。
しかしこれがまったく見当がつかないのでは、企業活動としては成立しえない。
したがって荒っぽくてもよいから、全体の推進の見通し(シナリオ)をおおまかに描くことが必要になる。
先ほどの例で言えば、工場eの生産システムを変えれば、研究開発部門aと物流部門bに混乱が生じることは予想できる。
それが影響しておそらく研究開発部門aと物流部門bは改善に着手して一年以内には新しいシステムを構築する。
……といったような想像力を駆使して「シナリオ」を描かなければならない。
O氏はビリャードをたとえにして、スリークッションで考えて変化を予想し、指示を出していた。
A職場を変化させたいが何か難しい障害がある場合、直接にA職場に改善を求めるのではなく、その隣のライバル関係にあるB職場に改善活動の火をつける。
それが同じくライバル関係にあるC職シナリオ展開では、T(およびTグループ)の部長クラスになればそれぞれが自分なりの経験則で変化へのシナリオ(プロセスデザイン)を持っている。
例えばKは生産システムの再構築にかかわった長年の経験から、モデルをベースに「明日の準備」の活動をしてきた。
この図で示されているレベル1からレベル7への変化シナリオは、部長職の仕事を遂行するうえでK個人が設定したものである。
Tがこのような変化シナリオを標準化してマニュアルとして持っているわけではない。
しかしTで生産システムにかかわった人々にとっては、この図のステップはごく当たり前のこととして理解されるだろう。
このシナリオ展開はTの人間には常識的な暗黙知として共有化されているからである。
である。
場の改善活動を引き起こし、それぞれ成果を上げ始めた。
それを見ていたA職場の人たちは、対抗心に燃えて改善活動に取り組み始めた!というようなイメージを描いて、さまざまな働きかけを言い出し屋はやっていくわけである。
どこから変化を始め、それがまずどこに影響が出るかという「読み」が重要である。
この読みを間違えると、最初のサブシステムの変化だけで終わってしまうケースが生まれる。
どこから変化を始めるかが日本型システム再構築で最も重要なステップである。
Kはこのステップを「ドミノ倒し」と呼んでいる。
どの駒を最初に倒すかによって、駒の倒れ具合、方向も決まってくる。
言い出し屋やチェンジリーダーに要求きれる資質とは、この変化活動の成り行きの「読み」の能力を鍛える必要がある。
T系のある工場では、自動車のフルモデルチェンジの立ち上げ要員を「ゼロでやろう」と生産管理部門のトップが言い出し、「まずはやってみる」アプローチで、その常識はずれのテーマをクリ欧米型では最初に構築すべき全体システム像が掲げられて展開に入るのに対し、日本型のシステム構築は関係者に暗黙知として共有されたシナリオがあるだけで展開されるので「いつ、どのようなシステムにまとまるか」だれにもわからない。
だから日本型のほうがより特色ある独自のシステムを生み出せるとも言える。
工場で新製品を立ち上げるときは、初めての製品がラインを流れるわけだから、当然さまざまな問題が発生する。
それを解決するために、通常立ち上げ要員と呼ばれる余分な人員が一時的に必要になる。
自動車のフルモデルチェンジのような場合であれば、二千人規模の工場でだいたい百人から百五十人くらいの人員を投入するのが通例である。
その工場ではとにかく立ち上げ要員を「ゼロでやろう」と工場長が、現場の人間から見ればまったく突然に言い出した。
「立ち上げ要員ゼロ」というのは、普通ならばハナから無理だとだれでも思う、まったく常識はずれの改善テーマである。
しかし、工場長と現場との信頼関係の厚かったその工場では、できるはずはない、と思えるようなテーマに意気を感じる何名かの「コダワリ」メンバーを核として、「まずはやってみる」こととして粘り強く取り組んでいった。
彼らを中心にして、工場の全員が頑張って、結局本当に立ち上げ要員ゼロで新車を立ち上げてしまった。
しかも今までにないほど、問題もなくスムーズな立ち上がりだった。
これには言い出した工場長も驚いたらしい。
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